空閑純(そらしずじゅん)を主人公にした「闇の喇叭」に続く第2弾。
前作を軽くおさらい
召和20年、無条件降伏を受け入れた日本。その後、北海道は日本から独立し、日ノ本共和国(北)と名乗ることに。
そして現在、平世21年。日本と北は停戦中ではあるが、終戦には至っておらず、日本では「私的探偵行為」が警察類似行為とみなされ法律で禁止されている。
主人公・空閑純(ソラ)は、探偵の両親に育てられるも、4年前に母親が事件の調査中に行方不明になり、父・誠と二人で奥多岐野の田舎で暮らしていた。
しかしとある事件を調査していたことがきっかけで、父親はかつて「調律師」という名の探偵であることが明るみになり逮捕されてしまう。母親の行方もわからずじまい。
一人残されたソラは奥多岐野を出て大阪へと向かう。
あらすじ
大阪で一人暮らしを始めたソラ。父親との面会も許されずアルバイトで生計を立てる日々。
しかしある日、弁護士の森脇から連絡があり、探偵と依頼人の仲介人・押井と会えることに。母親の行方がわかるかもしれないと期待するソラだったが、大した情報は得られず。
その後、押井の別宅にて男性の他殺体が発見され、ソラは調査を開始するのだったが・・・
感想(ネタバレも含みます)
大阪で新しい暮らしを始めたソラだったけれど、なんだかまわりが騒がしくなってきましたね。
仲介人の押井は、財閥の御曹司という超お金持ち。隣人の三瀬は「分促連」という日本の分割化を促進するグループのメンバー。
押井がソラに会うことにしたのは、この三瀬という男と親しくするのは危険だと警告するため。それまでは気のいい隣のお兄さんと好意的な目で見ていたソラだったけれど、一気に警戒心を強めちゃうのよね。でもそれも一時のこと、やっぱり自分の目で三瀬のことを判断すると決めるの。
そして今回ソラが挑むことになるのは、かつて「金魚」と呼ばれた探偵・砂家が殺された事件。死体が見つかった場所が押井の別宅であったため、押井を始めとする関係者が全員容疑者に。
しかも殺された砂家が元探偵ということもあり、またしても中央警察から明神警視がやってくる。そしてもちろんソラのことが気になって仕方がない。
そしてソラはというと、アリバイトリックを崩し犯人を突き止める。それは意外な人物であったが、同時に砂家が探偵として卑劣な行いをしたことも発覚。
残念ながら全ての探偵が善良なわけではないから、「私的探偵行為」が禁止されていることも、それを支持する人がいることも否定することはできない。
まだ探偵の真似事を始めたばかりのソラだけれど、最後に口にした「今のわたしには、希望しかありません」という言葉。どんな想いが込められていたんだろう。
まだ17歳。時折、奥多岐野の親友、景似子と由之のことを思い出しているのが、17歳の少女らしくてなんだかちょっとホッとしたりして。
慣れない化粧にしっくりとこない変装もそのうち上手くなるのかもしれないけれど、もうしばらくは初々しいソラでいて欲しい。
一方、ソラは知らないけれど読者だけが知る行方不明の母親・朱鷺子の現状。朱鷺子はどうやら記憶喪失で「北」にいるようだけれど、理由は明かされず監視もいるみたいだし、こちらは謎が深まってしまいました。
どういう形で決着をつけることになるのか、こちらも気になります。