貧乏でインドアなお気楽ライフ

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真保裕一「脇坂副署長の長い一日」

あらすじ

深夜午前0時を過ぎてからかかってきた、娘・有希子からの電話を皮切りに、賀江出署の副署長・脇坂の長い一日が始まる。

明け方には、大破したスクーターがあるとの110番通報を受け調べてみると、持ち主は賀江出署の若い巡査部長・鈴本であることが発覚。そして彼の行方はつかめない。

それだけでも一大事なのに、今日は地元出身のアイドルが一日署長を務めるというイベントがあり、ここでも問題が持ち上がる。

でもこれはまだ序章に過ぎない。その後も四方八方から報告されるトラブル、やがてそれは一つの事件を指し示していくのだが・・・

感想(ネタバレも含みます)

とりあえず大変な一日を過ごした脇坂副署長にはやっぱり労いの言葉が必要よね。管理職でありながら西へ東へと駆けずり回る終日だったんだもの。

だけど彼自身は現場復帰を望んでいるようだから、ますますその意欲は高まったかも。

そもそも、派閥に属してもいないのに派閥争いに巻き込まれ、いろいろあって副署長という今の立場。今日は息抜きにもなったかもしれない。

ただ緊張感がありすぎた。警察官・鈴本の不祥事の疑い、一日署長を務めるアイドル・桐原もえみの薬物疑惑、そして家族である妻と息子の怪しい行動。イベントのために大勢集まったマスコミにはこのことを絶対に悟られてはいけない。そんな中での隠密行動。

最初はミスリードされながらも、それらがすべて9年前の火災事故へと脇坂副署長を導いていく。やがてそこで暴かれる政治家の不正な資金の流れ。

でもこれらが明るみになる発端となったのは、警察の派閥争いでの醜い鍔迫り合いがきっかけ。権力に取りつかれた者たちが始めたゲームが9年もの時を経てやっと決着をつける時がきたのだ。

こんな風に書いていると脇坂副署長が一人で大活躍したみたいに見えるけれど、全然そうではない。

むしろ真の立役者は最初不祥事を疑われた鈴本なのだ。ちょっとしたことがきっかけで9年前の火災事故を調べ、大変な真実に気付いたからこそ起こした行動。

そして警務課の若い女性警官・小松響子も鋭い観察眼で脇坂副署長を感心させた一人。

この若い二人の存在が大いに脇坂副署長を刺激したのではないかなぁ、と思います。というのも、この本を読んだだけでは脇坂副署長の刑事としての能力をつかみきれず、推理の面でも後手後手に回っていたので、やっぱり現場復帰への思いはより強くなったのではないかなぁと。

正義感が強く愚直さを感じるけれど、観察眼については小松響子に負けていて、それがブランクのせいなのか凡庸なせいなのか?はたまた気合がたりなかったのか?でもそういうところにちょっと親近感が湧いたりして。

今日はちょっと使われた感も大いにあったけれど、長い一日の終わりは、まだちょっと終わりそうにない終わり方。

駆けずり回る副署長、私はそれもいいと思いますけどね。