貧乏でインドアなお気楽ライフ

薄給会社員が綴る雑記ブログです

青柳碧人「むかしむかしあるところに、死体がありました。」

あらすじ

「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室竜宮城」「絶海の鬼ヶ島」の5編の短編集。

一寸法師の立てた計画、心優しい花咲か爺さんの殺害事件、鶴のつうは恩返しに反物を織り、カメを助けた浦島太郎は竜宮城で起きた密室殺人事件の謎に迫る。そして桃太郎が鬼退治を終えたその後の鬼ヶ島。

それぞれの昔話がミステリーになると・・・

感想(ネタバレも含みます)

5つの物語があるわけだけれど、この中で真っ黒なのは一寸法師、花咲か爺さんは被害者、鶴のつうは殺人教唆?、浦島太郎は玉手箱を開け概ね昔話通り。ただ玉手箱を開けた時に密室殺人の謎が解けるという冥途の土産っぽい終わり方。

そして男として罪深かった桃太郎。それが何十年も後になってから鬼ヶ島で凄惨な大量殺人事件につながってしまうとは・・・

一寸法師の権力欲や、おばあさんのおじいさんに対する不満はわかりやすい。でも鶴のつうあたりから腹黒さが増してくるというかなんというか。

最後まで読んで気付いたんだけれど、なんか段々と殺人の動機やトリックが複雑化しているような気がする。

つるの倒叙返しに関しては物語はループしていくし、鬼ヶ島は何がややこしいって登場する鬼の名前にみんな鬼がついててややこしい。鬼太・鬼厳・鬼茂って風にね。

そしてそれぞれの物語で登場していた便利アイテムが、最後は鬼ヶ島で再登場。

いちばんサスペンスチックであり、最後にはまるでほくそ笑んだようなサルが語り部になっているあたりが、昔話っぽい。というか元は全部昔話なんだけれど・・・

それからせっかくなのでなんとなく、ドコモのCMの桃ちゃんと浦ちゃんに脳内変換してみたところ、思いのほか物語にキャラがしっくりくる。

色男に、推理が遅すぎた男。そんな風に思ったのはわたしだけかなぁ?

まぁ、だけど鬼ヶ島の桃太郎の場合は、本人がどうこうっていうのではなく、その置き土産が出生の秘密を知りやらかしてしまったっていうのが真相なんだけれどね。

私がこの5編の中で本当の昔話をふまえた上でベストオブ犯人を決めるとしたら、一寸法師か鶴のどちらか。

でもやっぱり鶴のつうかなぁ、だって始末が悪いんだもん。いちばん関わりあいたくないタイプだわ。

そして何気にカメさんにはちょっとショックを受けました。