内容
表の顔は防犯コンサルタント・裏の顔は泥棒という榎本径と、美人だけれどプライドが高く推理にもちょっと難のある弁護士・青砥純子が、密室殺人を解決へと導く。
収録されているのは、「ゆるやかな自殺」「鏡の国の殺人」「ミステリークロック」「コロッサスの鉤爪」の4編。
感想(ネタバレも含みます)
「ゆるやかな自殺」「鏡の国の殺人」「コロッサスの鉤爪」では、犯人の動機が明確に示されているんだけれど、「ミステリークロック」に関しては、本人の口からは動機は語られず、榎本が言及した”おそらく金銭”という言葉だけ。
だけど殺された作家の森玲子の作品は、トリックよりも人間が描かれている作風だというから、ちょっと皮肉っぽいなと思ってしまった。
彼女を殺害したのは夫である時実玄輝。
舞台は森玲子の作家生活30周年を祝うために人里離れた山荘で開かれた晩餐会での出来事。
招待客は数人。ディナーのあと、玲子は残った仕事を片付けるために一人書斎へ。残された招待客たちは、時実がホストとなり、玲子のコレクションである8点のアンティーク時計の値段を価格順に並べ替えるというゲームを開始。
しかもなんと正解者の一人には商品を用意しているというから招待客は全員夢中に。
だけどその裏で時実の計画は着々と進行し、玲子は密室で毒殺されてしまう。
そして時実に促され秘書の夏美が玲子を呼びにいくと、書斎で死んでいる玲子を発見。そこから先はほぼ時実の独壇場へとなっていく。
玲子が書斎へと去ってから、やたらと全員にわかるように時刻を確認する時実。もうこれだけで時実が犯人だっていうのは読んでたら想像がつくんだけれど、トリックがわからない。
ただ時計を使ったんだな、と想像するだけ。
そして最後、榎本がトリックを解くんだけれど、説明を聞いていても難しい。図解もあったけれども難しい。そして何よりうまく想像できないT_T
玲子が殺されたことがわかった時点から、読者はどうやってトリックを解くかだけを迫られてるような作品。
私には全くわからなかったけれど・・・
それにアンティーク時計の価値もわからないので、いくら浪費家とはいえ動機は”おそらく金銭”とした榎本の意見にもちょっと意義あり。
それよりも売れっ子作家の妻への嫉妬。って言われたほうが私としては納得しやすい。
だって玲子には愛されていたようだし、ここで綴られている彼女の人柄を考えると、夫の浪費だって許していたのだろうではないかと思うのだ。
だとすると、その許しさえも時実をイラつかせたのではないかな、って思っちゃうんだよね。
時実が動機を語らなかったので真相はわからないけれど、自分の考えたトリックを使って勝利を得たかった、そんな風にも思える。彼女の作品への対抗心。
答えがないだけに想像は尽きないですが、それもまた本を読み終えた後の楽しみですね。